かみふの風にのって

2023年11月1日

かみふの風にのって

第一話 夏が来ると思い出す。

うるさいくらいのセミの声と
ひんやりと冷たい風、
ラベンダーの甘い香り、
そしてあなたの姿を-。

私は一人娘としてラベンダー農家の両親に大切にのびのびと育てられた。

かみふの町は綺麗な空気と四季ごとに変わる色とりどりの自然、

1年中たくさんの美しいで溢れている。かみふらの八景のひとつである深山峠から見る自然いっぱいの風景は今でも目を閉じると浮かんでくる。

ちょっぴり不便な場所にあるけれど、そんなかみふが大好きだった。

私は幼い時から学校から帰ってくるとすぐに両親のお手伝いをしていた。ふわっと香るラベンダーの匂いに包まれている時間が大好きだった。

そんなある日、私が畑に向かうと同い年くらいの1人の男の子が ラベンダー畑を見て涙を流していた。

私がおもむろに彼の元に走っていくと彼は私に気づいた途端、 走り出して逃げてしまった。

悲しさなのか、感動なのか、 どっちともとれない、けれど、 儚く美しい横顔だった。

それから彼がまた私の前に現れたのは、木々が美しく色づいてきた秋の頃だった…。

 

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