かみふの風にのって

2023年12月28日

かみふの風にのって

第三話 あっという間に時は過ぎ、長い冬がやってきた。

あっという間に時は過ぎ、長い冬がやってきた。

ジェットコースターの路に雪が積もり、車で通るのは少し怖い季節だ。

 

 

紅葉狩りへ出掛けた時に出会った少年とは一緒にドライブをして以来見かけなくなってしまった。あの時真っ赤に染まっていた十勝岳も雪化粧に包まれ、景色の流れと並行するように私の心もどこか寂しさを感じていた。

 

雪で真っ白になったラベンダー畑。ラベンダーが鮮やかに染まっていた夏、初めて少年を見かけた日のことを、畑を眺める度につい昨日のことのように鮮明に思い出す。今、どこで何をしているのか分からぬままのあの少年。名前すら聞かなかったことを少し後悔している。

 

 

ある日、私は小さな女の子を連れた親子を見かけるようになった。ラベンダーの咲いていない時期に畑を訪れる人は珍しい。

 

親子を見かけた数ヶ月後、雪が解け始め春が近づいていたある日、女の子が一人でラベンダー畑に立っていた。近寄って女の子の表情を伺うと涙を流していたのだ。

 

まるで、あの時の少年と同じように…。

 

かみふの風にのってTOPへ

お問合せはこちら

Top