2024年1月25日
かみふの風にのってTweet
第四話 冬を超えたばかりのラベンダー畑を見て泣いていた女の子。
冬を超えたばかりのラベンダー畑を見て泣いていた女の子。私は驚いて声をかけた。あの男の子のように走り出すことはなく少し困ったような笑顔を見せた。
なぜ泣いているのか聞いてみても言葉が返ってくることはなく、私はただ側にいることしか出来なかった。少ししてご両親が迎えに来てその子とはそれっきりになってしまった。
夏に向け農園の準備を進める中でも2人のことが気がかりだった。そんな中久しぶりに時間ができたので和田草原に行くことにした。360度かみふを感じられ、静かでお気に入りの場所だ。
澄んだ空気をめいっぱい吸い、周りを見渡す。十勝岳の方にはまだ雪が残っている。狭くて広いかみふの景色を眺めていると男の子と初めて会った日、ドライブをした日、女の子が泣いていた日の光景が思い浮かぶ。その時後ろから声をかけられた。
私は驚いて振り向くと、そこにはあの女の子が立っていた。女の子ははにかんで私に一通の手紙を差し出した。渡された手紙を読んでみるとどうやら差出人はあの男の子らしい。
そこにはドライブに誘ってくれたことへの感謝の言葉と、それっきり会うことが出来なかったことへの謝罪の言葉、そしてもうかみふにはいないことが記されていた。女の子とは家が近所で家族ぐるみで仲が良く、手紙を渡して欲しいと頼んだという。
気づけばさっきまで綺麗だったかみふの景色もぼやけていた。女の子はそっと私の横に腰掛け、静かに景色を見つめている。
私はただ、泣くことしか出来なかった。